おしえて先生

*パパ・ママへのメッセージ*

藤岡先生が園長先生として発行されている園便りより、2011年秋の便りからの抜粋です。


運動会で育てたいもの―――――10月

  「ヨーイ」のかけ声に、二歳児、三歳児のポーズの格好よいこと、さらに次の合図の笛が鳴るまで集中して待つ姿は見事です。フライングで金メダルを失ったどこかの選手とは大ちがいです。
  四~五歳児の中には"勝つぞ"という気持ちの高ぶりから飛び出すこともありますが、大きい組さんへの憧れからポーズはまねても、お友だちより早く走ろうというよりも、一緒に楽しく、格好よいポーズ、合図を守る心地良さが三歳児の感性なのでしょうか。
  フレーベルの『人間教育』という著者の中に「子どもの内にあるものにひそかについていきながら、まどろんでいるものを目覚めさせる」という言葉があります。朝まどろみ始めた頃、キッチンから聞こえるお食事の支度、漂ってくる匂い、現代風にはテレビの音楽などで目がぱっちり覚めるように、まさに育とうとしているところが外からの刺激で育っていくんですね。
  就学前の養護と教育が一体となった営みを「保育」といい、楽しく生きていく力の基本を育てる時です。体を動かすのが苦手な子どもたちも「面白いな」「すごいな」「やってみたいな」「よし、やってみよう」というそれぞれの年齢ごとに仲間との楽しい遊びが心と体を動かし、チャレンジする意欲、やれたという自信を育て、人と共に楽しく生きていく基本になるのだと思います。運動会を訓練とせず、そんな人間形成の土台を作る節目のひとつと考えています。


読書の秋、読書の好きな子どもに―――――11月

  「十月十日は「目の愛護デー」、その三日後の十三日に白内障(左目)の手術をしました。ちょっとドキドキしましたが、痛くもなく、わずか10分の手術で、まわりが明るく鮮明になりました。「読書の秋」、また夜の読書が楽しめます。~中略~
  最近、年長児の中に自分で拾い読みする子どもがいるようですが、本が好きになるためには、まず活字より内容の魅力にとりつかれることが大切です。そのためには拾い読みよりも大人が楽しく読み聞かせ、子どもがその楽しさをたっぷり味わう体験が必要です。パパやママのナマの声で、肌のぬくもりと一緒に絵本の楽しさを共有することが大切です。
  「同じ本を何度も要求する」とか「多忙でとても時間がない」というのもわかりますが、子どもを読書好きにしたいと思うのであれば、忍耐と辛抱が肝心です。絵本の魅力を知った子どもは、面白く楽しむ世界が文字・活字から出てくることに気づき、「読みたいな」「文字を覚えたいな」という意欲をもちます。
  「教え込む」ために読むという姿勢は逆効果です。文字に興味を持った時は教えてくださってもよいのですが、箸の使い方を無理強いすると食事をしたがらないように、文字を知っても内容に魅力を持たなければ、読書意欲は育ちません。
  読書の秋、ぜひ読み聞かせの楽しさを親子で共有してください。



*保育園の窓辺から・・・*

こちらは、北九州市保育士会の機関紙「ぷりずむ」より。
子育てに悩む親、困難な環境下でも笑顔で子どもに接する保育者、二つの心によりそい綴られています。どんな時代にあっても、「子どもの現在(いま)が日本の未来(あす)」。親と保育者が、このことをともに考えていただく一助になればと書かれています。


数えきれないほど、つながってきたいのち

  子どもたちの歓声に誘われて園庭に出て行くと、「園長センセイ」と走ってきて「タッチ」を求める。タッチしてすぐ友だちのところに戻る子どもと、「ドウシタン、園長センセイ、オ手テ?」と黒いシミや浮き上がった血管を不思議そうに見て話しかけてくる子どもがいる。「洗ッテモ落チンノ!?」、正直に思ったことを口にすることばに、老いを思い知らされる。「園長先生、おばあちゃんになったからよ」「ヘェー、デモ手品上手ヤン」ちょっと悪いと思ったのか、おせじめいたことを言って走り去った。
  朝ベッドで目覚め、こわばった指先を閉じたり開いたりしながら、昨日子どもたちに気づかれたシミ、浮き上がった血管をしみじみ眺め、八十歳にしてはよく働くよねと一人つぶやくが、気持ちはあせっても、体力はもちろん、得意だったうたも高音が出ず、ピアノを弾く指の動きも保育者たちにはかなわない。子どもたちの心に何か存在感をと思い、体力を要しない人形劇や手品を覚えた。手品の師匠は楠原悦子先生だが、有り難いもので自園から光法保育園に転園した子どもは、"さっこ(佐規子)"先生の方が名人と信じてくれていたらしい。しかし、これもいつまで続くのだろうと、しみじみ老いを実感する日々であるのに、またも北九州保育士会広報誌「プリズム」への原稿を依頼された。一号から執筆して百二十四号目である。
  北九州市保育所連盟広報誌「保育北九州」のコラム「視点」も、初回からの執筆で次回は百六十四号目になる。自園の「園だより」の「パパ・ママへのメッセージ」は、七百回目を越える。主任達にせめて一学期に一度でも分担執筆をと呼びかけるが、やってみようという気配をみせない。老齢特有の白内障傾向も増し、読み書きのスピードも衰え、少しは労わる気持ちをと思うのだが、読み手が期待しているからと押し切られる。子どもへの心遣いを忘れた大人優先の保育施策への怒りにまかせた憎まれ口の拙い文章を本気で求める人はないだろうから、ボケ防止のための老人への思いやりなのだろうと思い直してみたりもする。書こうという気にさせてくれたのは、三歳のYちゃんの言葉である。
  母の日のプレゼントに描いたお母ちゃんの絵。「ママの一番好きなのはどこ?」と聞かれた後の彼の答えが「オヘソ!」
  ご存知の方も多いだろうが、『「いのちのまつり」つながってる!』の読み聞かせが、彼の心にしっかり刻み込まれていたのである。その絵本の最後に頁に「数えきれないほど、たくさんのお母さんたちが、数えきれないほど、たくさんの赤ちゃんを産み、数えきれないほど、たくさん抱きしめて、つながっていく大切なもの・・・」とある。幼な児の大切ないのちを守り、育て、つなげていくことの重要性を、それに関わり、支える保育者の"いきいきしさ"が保たれることの大切さを、まだまだ発信し続けなければと思う。
  しかし、そろそろバトンタッチしたいのが本音でもある。
(「ぷりずむ」124号 2011年6月27日)


 

 
 

1946年、京都女子専門学校保育科を卒業後、光沢寺保育園に入職。以後一貫して乳幼児保育に従事。現在、光沢寺第二保育園園長。北九州市保育所連盟会長、国際婦人開発基金(ユニフェム)日本国内委員会北九州地域等委員会会長、財団法人アジア女性交流研究フォーラム理事、同児童福祉施設等第三者評価委員会・同社会福祉審議会各委員等(以上、現職)。この間、全国社会福祉協議会全国保育士会会長、福岡県保育協議会会長・同保育士会会長、福岡県立大学・西南女学院短期大学非常勤講師等を務める。


●仲間達への定期便(西部読売開発出版部)
●育てよう、いきいきっ子(共著、蒼丘書林)
●子どもと環境(共著、蒼丘書林)
●感性を育てる保育実践領域環境と感性(共著、ミネルヴァ書房)
●感性を育てる保育実践領域人間関係と感性(共著、ミネルヴァ書房)
●感性を育てる保育実践領域言葉と感性(共著、ミネルヴァ書房)
●保育園の窓辺から…(蒼丘書林)
●視点はいつも、子どもたち 保育園の窓辺から…PART2(蒼丘書林)


 

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